『雑感』

稀に更新します。

映画   ドラゴンタトゥーの女  

 


ドラゴンタトゥーの女


2回見させていただきました。なるほど期待通りの出来。さすがデイヴィッド・フィンチャーですね。


この映画はスウェーデンの作家スティーグ・ラーソン原作の「ミレニアム」シリーズの一作目に当たります。


経済ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストは、大物実業家ヴェンネルストレムの不正を訴えた記事を書き、名誉毀損で訴えられる。敗訴した彼は共同経営していた経済誌「ミレニアム」の編集部を退く。そんな失意のミカエルは、ノールウェイ地方の孤島ヘーデビー島に住む、大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルから、ある仕事を依頼される。表向きは、ヴァンゲル一族の評伝の執筆だが、真の狙いは、40年前に失踪したヘンリックの甥の娘ハリエットの行方を改めて調査することにあった。島へ渡る橋で事故が起き、密室状態にあった島で、彼女は忽然と姿を消した。ヘンリックは、ハリエットは何者かによって殺害されたと考え、40年間、独自に調査を続けてきたのだった。報酬はヴェンネルストレムの「首」。真実の追求のためミカエルは小さな小屋を借りて忌々しい一族のタブーに切り込む仕事を引き受ける。一方、ヴェンネルストレムを独自に調べる「背中に龍の刺青が彫られた謎の女」がいた。

 

監督は「セヴン」、「ソーシャルネットワーク」等ヒット作からマドンナのМVまで手掛ける巨匠デヴィット・フィンチャー。、主人公のジャーナリスト・ミカエルを演じるのは「現ボンド」ダニエル・クレイグドラゴンタトゥーの女をルーニ・マーラ。さらに脇を「サウンドオブミュージック」のトラップ大佐で知られるクリストファー・ブラマーに「パイレーツシリーズ」でターナー父を演じたステラン・スカルスガルド両怪優が固める。コロンビア映画が総力を挙げて取り組む作品であることがよくわかります。何よりオープニングは必見!!
冒頭、完全にホワイトアウト状態の小屋でヴァンケル老人が物語でも重要な「押し花」を眺めながらある人物からの電話にこたえるシーン。そこからまさかのオープニングテーマ、移民の歌!!これがすごい。
フィンチャーといえば「セブン」のオープニングが有名ですが、極めて鬼畜かつ性的であるこの3分間はそれ以上に多くの人のこの映画に対する評価を決めてしまうでしょう(笑)ましてや音質の良い映画館で見ればなおさらの迫力ではないでしょうか。もしアカデミー賞に「冒頭3分賞」があるなら受賞はまちがないかと・・・そう思うくらいです。

 

さて1回目は「ミレニアム」の知識なしに、2回目は熟読とまではいかないが原作を読み元作「ミレニアム・ドラゴンタトゥーの女」を鑑賞して鑑賞しました。やはり期待の作品というということでお客さんはいっぱい。2時間38分と長編映画らしい時間で疲れたことは疲れました。ちなみに鑑賞後出ていく若いお客さんが口々に「エロかった」と言ってましたがさほど過激な描写はなく(しいて言えば変態弁護士へのお仕置きシーン)、むしろもっぱら噂されている「モザイク」場面は興ざめでした。やはり映すか隠すかのどちらかにしてほしかったと思います。また映画は原作に忠実かつリスペクトして作られているのも感じられました。もちろん相違点は多々あります。特にミカエルと少女ハリエットをつなぐあるポイントはフィンチャーによって丸々カットされていました。これはロマンス要素をミカエル・リズベット・エリカに絞って鮮明にしてくれたと解釈しています。他にも謎解き場面をスパッと切り捨てサスペンス帳に仕立て上げたのは正解だと思います。今作における「ミレニアム」におけるミステリー要素が少なこさは普通ウィークポイントになりかねないわけですが、もともと原作の謎解きはあっという斬新さがあるわけではなく(乱歩などといった金字塔と比べて)、リメイクのリメイクという立場からも認めてよいのではと・・・。その代わり「24」を彷彿とさせる縦2分割の同時進行でミカエルとリズベットが謎を解いていく場面はハラハラものです。そして一気に「黒幕」が分かってからの盛り上がりはまさにフィンチャーの思惑通りの仕上がりでしょう。ですから謎解きものを期待した人には物足りないのは仕方ないかもしれませんが、サスペンスアクションの好きな人には最高の映画だと思います。そして何よりこの映画で大事なのは舞台であるスウェーデンの景色。

 

 

ところがこの映画、とにかく原作を圧縮しすぎたため話が終盤で詰まってしまいます。
その最たるのがヴァンケル家一人一人の説明シーン。これが会話の中で行われるわけですが(もちろん物語の性質上すごく大事なのはわかります)、やはり観客の頭を混乱させているようにしか感じませんでした。特に今回は原作と違い何人かとのヴァンケル家の人物との邂逅がカットされているわけですし、正直「一族の誰かが殺したに違いない」と言われても必然に半分しか怪しく感じなくなってしまうという結果に・・・。原作のように編集長エリカとの掛け合いや収監シーン(映画では無罪だが原作では禁固刑)も省いてるのだからむしろ前回指摘したミステリー要素の足しになるような「調べてる感」出すためにこの辺をうまくスクロールしてほしかった。特にフィンチャー監督なんですからかっこいい音楽をバックに乗せて次々調査資料が作られていく…。

 

これが結果として観客の終盤の展開のついていけなさにつながっていくんだと感じるわけです。特に黒幕が判明し物語が一気に盛り上がりを見せた後の始末の仕方、ここです。見ていただけたらわかると思いますが、まったく予習なしで見ると「えっ何の話?何が始まったの?」って感じると思います。時間があればもう少し何とかなったのでは・・・って結果論ではありますがwでもこれだけの作品でフィンチャー監督だからそれくらい注文つけたい気持ちが出てきます。
もう一つ気になったのは失踪したハリエット(以後少しネタバレ注意)。原作スウェーデン版と違いその真相がオーストラリアでなくロンドンにあったことについて確実にラーソンとフィンチャーの価値観の違いが出ています。ここは「好き嫌いの問題だろ」というのが正答なんでしょうが、それにしてはちょっととってつけた感が強く出ていたように思うんですよね・・・
ちなみにとってつけた感といえばミカエルの娘(笑)雑すぎでしょ・・・って突っ込みたくなります。まぁアメリカ映画ですからある種仕方ない事情も見受けられますが。同様に「ナチス」の件もとってつけた感ビンビンです。これはまぁフィンチャーのせいではないですが。


と、ここまで言及してきましたが、とにかくリズベットかっこいい!!
原作やスウェーデン版にない狂気さ(そこに含まれる孤独さ)がルーニから感じられます。特にスウェーデン版は背中のタトゥーがあまり出てこなかったり、今作ではあまり取り上げられないある「過去」を引きずりながら生きてる感が出ていました。原作ではもちろん「過去」については記されてないわけですが、フィンチャーはこのあたりをとにかくひたすら本能と興味のままに生きて自ら拒むように孤独を選ぶリズベットに仕立てます。時折みせる背中の刺繍(特に序盤)にどこか寂しさが凝縮されていて、そしてだんだん心を開いていったミカエルに対して言うあるセリフ・・・これで十分リズベットの人物像+自作への布石が完成しちゃうという!!

この辺はルーニの演技に感服してしまいます。

もちろんダニエル・クレイグのミカエルも味がある。原作では女性好きな所やスウェーデン版ではしがない中年だったミカエルは落ち着いていてダンディ。というかまんまボンド(笑)。でもそれがリズベットとの対極感を引き出していてよかったかなと。あとクリストファーとステラン両怪優の不気味さも最高です。特にステラン演じる息子社長はミカエルに情報を与えてくれるシーンでさえ全身海藻だらけのビル・ターナー役の時より不気味という・・・さすがハリウッドの石橋蓮司さん(笑)
謎解きのシーンも原作より映画のほうがわかりやすいですし、それもそんなに難しくない仕組みだからこそすごく楽しめます。予備知識は必要ありません。ミステリーではなくサスペンスと捉える方が良いかもしれません。

個人的には最初最高!!最後残念・・・でも結果リズベットかっこいい!!という評価です。向こうでは思ったほどの興行ではなかったようでフィンチャー降板もささやかれていますが、ここで若い監督にバトンタッチは解せないです。ということからもこのレビューの最初にあるように少なくとも一回目だからこそさすがフィンチャー!!・・・と思うわけでフィンチャーなんだからそら当然やろというところに2回目以降は落ち着くんですよねw。「ソーシャルネットワーク」よりは評価が低いとか、「ゲーム」のほうがいいとか、「セブン」のほうが・・・とかそれは人それぞれですし人によって評価が割れやすい映画ではあります。


余談ですがフィンチャーの続投はDVDの売れ行きしだいとも噂されているのでその辺もよろしくお願いします。
個人的には3部作フィンチャーで終えてほしいです。


以上。ツイッター上で公開したドラゴンタトゥーの女の映画レビューをまとめて掲載させていただきました。